一喜一憂の資本主義

朝のNHK第1の電話インタヴューは評論家の内橋克人氏だった。独特の謂わば醒めた視点でのコメントは以前から興味深く聞かせてもらっている。今日のコメントのポイントは以下の2つだった。
1.現在は「一喜一憂の資本主義」になっている。本来的には会社は従業員に喜んで仕事をしてもらうことにより発展するものである。ライブドア事件ではないが、会社に何の愛情もなく、株価の高低のみしか考えていない投資家の動向に右往左往しているのは本末転倒といわざるを得ない。当然だが会社は継続企業(ゴーイングコンサーン)ということを忘れてならない。
2.世界経済フォーラムダボス会議)で、国別ランキングが発表されたが、その指標は次の3つから判定される。①技術力指標②マクロ経済指標③公的経済指標でその3つの指標でランキングをつけると、1位はフィンランドで日本は残念ながら12位、ベスト10に北欧諸国が5カ国も入っている。国の価値は①の経済力指標だけで測るべきでない。
北杜夫の「私の履歴書」は今日が最終回、「満足せず、後悔もせず、好きな文学を続けられ幸せ」で締めくくられた。何回かこの日記で引用したが興味深く読ませてもらった。彼の旧制松本高校時代の同級生で、終生の文学の友でもあった辻邦生のこともいろいろ思い出すことができて良かった。私が装丁に惹かれ初めて読んだ彼の小説「背教者ユリアニス」の主人公はローマ皇帝で、新興のキリスト教の殺伐とした教理を嫌い、オリンポスの神々の信仰を守ろうと戦い結局は敗れ、背教者の烙印を押された。辻の感情を抑えた静謐な謂わば叙事詩と言って良い作品に出会えたことは幸運だった。その辻も亡くなって早5年以上の歳月が経つ。今の時代の金万能の殺伐とした世の中を思うとき考えさせられることが多い。
フィンランドの作曲家シベリウスのヴァイオリン協奏曲(諏訪内晶子(ヴァイオリン)、サカリ・オラモ指揮 バーミンガム交響楽団)を聴いている。彼は確か40歳前に作曲活動を封印し、92歳でなくなるまで余生を静かに過ごした作曲家だ。この曲の澄明で人生に対する諦観を感じさせる響きはブラームスに似たものを感じる。