昆盧遮那如来

夜10時からのNHKの「その時歴史が動いた」は東大寺大仏誕生にまつわる物語だ。聖武天皇律令を日本に根付かせ法治国家にするために大仏造立の大プロジェクトを勧進することにした。たまたま先日借りてきた三田誠広の「天翔ける女帝」は聖武天皇光明皇后の間に生まれた後の孝謙称徳天皇となる阿倍内親王が主人公の物語だ。番組では大仏建立は帝と民との大プロジェクトと位置づけ、特に後の大僧正行基聖武天皇との出会いに大きく焦点を当てている。小説では聖武天皇が女性ではきわめて異例なのだが皇太子とした阿倍内親王に大仏造立の思いを次のような言葉で語っている場面が印象的だ。そのまま引用してみる。
「三千世界の諸仏の中で最も尊いみ仏、それが昆盧遮那如来だ。昆盧遮那如来は宇宙全体の象徴なのだ。阿弥陀如来の極楽浄土も、薬師如来浄瑠璃世界も、そして釈迦如来に導かれたわれらの世界も、昆盧遮那如来の頭髪の一本、肌の上の小さな塵にすぎぬ。その昆盧遮那如来の巨きさを感じ、己の小ささを認めることが、悟りの境地に至る第一歩だ。いま話したことは『華厳経』というありがたい経典に書かれているのだが、この経典は難解で、世の民の理解を超えている。わたしは昆盧遮那如来の大きさを形にして世の人々に示したいと思う。昆盧遮那如来の大きさをそのまま現した仏像、唐天竺にも例のない巨大な仏像をこの平城の地に築きたいのだ」
●聴いた曲
 ブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第1番、第2番、第3番」
  イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)
  ダニエル・バレンボイム(ピアノ)