孤高の天才

ヒデ中田英寿の現役引退のニュースが流れる。完敗したブラジル戦直後のピッチで精根尽き果て、ピッチの芝生で数分仰向けの姿勢で倒れこみ、赤く目を腫らした放心した表情を見たとき、信じたくないが引退するのではないかと思っていた。気にかかっていたので毎日ネットで最新のメールの有無を確認していたが、ブラジル戦の前日21日のメールが最新だった。ニュースを聞きメールを確認すると、7月3日付で「人生とは旅であり、旅とは人生である〜1985年12月1日―2006年6月22日〜」と題した推敲に推敲を重ねた長文が載っている。半年ほど前から今回のワールドカップを最後に引退しようと決めていたと言う。今回の予選3試合のヒデのまさに神がかり的な孤軍奮闘と言って良い、力の限り動き回る姿は私にとってもずっと記憶に残るだろう。ただこの1ヶ月の姿を見ていると、チームの中での他の選手に対する「何故わからないんだ」といった苛立ちというか葛藤が前面に出ていて悲惨ですらあった。その部分をメールから引用する。
『サッカーという旅のなかでも「日本代表」は、俺にとって特別な場所だった。
最後となるドイツでの戦いの中では、選手たち、スタッフ、そしてファンのみんなに「俺は何を伝えられることが出来るのだろうか」、それだけを考えてプレーしてきた。
俺は今大会、日本代表の可能性はかなり大きいものと感じていた。
今の日本代表選手個人の技術レベルは本当に高く、その上スピードもある。
ただひとつ残念だったのは、自分たちの実力を100%出す術を知らなかったこと。
それにどうにか気づいてもらおうと俺なりに4年間やってきた。
時には励まし、時には怒鳴り、時には相手を怒らせてしまったことも合った。
だが、メンバーには最後まで上手に伝えることは出来なかった。』
大のファンの一人として孤高の天才ヒデに伝えたい。「長い間お疲れさま。良い夢を見せてくれてありがとう」
●聴いた曲
 ベートーヴェン交響曲第3番(英雄)」
  ゲオルグショルティ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団