うれしーよ!

切抜きを続けてきた宮城まり子さんの「私の履歴書」は早いもので最終回、表題は「私は新入社員」だ。社会という会社へ勤めるつもりで「履歴書」を書いたのだという。ねむの木の子どもたちの絵の展覧会の場所として六本木ヒルズの天辺の森アーツギャラリーを提供してくれた森ビルの森さんとのやりとりのシーンが印象的だ。そのお礼に彼女が彼の会社を訪問したときのことだ。
「絵を描いて持ってくるだろ。その時何というの?『上手いね』とか『ここがいい』とか言うの」と質問されたとき、「言いません。『これ上手に描けた』って言ったら、子どもたちはその場所で終わるような気がしますから。私は『あーうれしいわ』と言います。子どもは人を喜ばせたと幸せに思ってくれます」。彼女の見送りにエレベーターまで送ってくれた森さんは「うれしーよ」とつぶやいた。
終わりの部分をそのまま引用させてもらう。
この社会という会社に入社できたら一生懸命努力しますので、どうぞ採用してください。私、この履歴書の中で父も母も弟も愛する人も亡くして独りぼっちになってしまいましたから、さびしくて夜眠れない日もあります。けれどやり通さなければならないと思います。さあ、四月から私は新入社員。一生懸命努力します。読んでくださってありがとうございました。
私も彼女に言いたい。「うれしーよ」