カラバッジョ

午後8時からのNHKハイビジョン特集「天才画家の肖像・カラバッジョ 無頼が生んだ聖なる美」、彼の生涯を辿りながら「聖マタイと天使」、「聖マタイの召命」、「聖マタイの殉教」、「パウロの改宗」、「キリストの埋葬」、「聖母の死」など作品の数々を堪能することができた。カラバッジョの絵は徹底した写実性、劇的な明暗対比、感情表現で知られる。彼自身の「絵は事物をあるがままに再現しなければならない」との言葉が裁判記録に残っている。驚いたのは「リュート弾き」の絵だった。机上の譜面の曲をリュートを弾きながら歌っている美少年の姿が描かれている。彼の絵の研究者はその譜面から曲名を推測し、劇中劇で演奏が再現された。リュート弾きの指先、リュートの弦の微妙な間隔などから判断してカラバッジョは音楽の素養も相当なものだったらしい。少女と見違えるような美少年、カストラートという。電子辞書で引くと「中世イタリアで盛行した、男性去勢歌手、音域は広くほぼ女性の音域で、力強い響きを持つ、特にオペラ・アリアの男性主役として活躍」となっている。20世紀始めにローマ法王庁により禁止された。去勢と言えば中国の宦官が知られているが、映画などでは頭髪が抜けてノッペラボウな姿がほとんどなのでリュート弾きの美少年とのあまりの違いに驚いた。
この文章は実は「男はつらいよ 拝啓車寅次郎さま」を観ながら入力している。亡くなる2年前の平成6年の作品なので渥美さんの病やつれの冴えない顔色が痛々しい。彼は誰にも自宅の住所を教えず、ガンに罹っていることも誰にも言わなかった。