歓喜の歌

午前9時からのNHKハイビジョン特集は「名門オーケストラを救え」の再放送だった。パリのコンセール・ラムルー管弦楽団は2005年1月企業スポンサーの支援が打ち切られ解散せざるを得ない状況に追い込まれていた。最後の演奏会は主席指揮者佐渡裕の指揮でベートーベンの交響曲第9番歓喜の歌」で締めくくるべくリハーサルの光景が映し出されていた。佐渡は私の好きな指揮者の一人でいつもながらのリーダーシップあふれるエネルギッシュな姿が印象的だ。劇的なことが起きた。最後の演奏会の前日にフランス政府の文化省から通常の倍の補助金が交付されることが連絡された。ともかく解散は回避できたわけだ。楽団のマネジャーがそのことを佐渡に電話した時、彼の「really?bravo!」の歓喜の声が電話口から聞こえてきた。翌日の演奏会の「歓喜の歌」の佐渡はまさに神がかりといってよい精魂こめた指揮ぶりで、演奏が終わったあと数秒間は力を出し尽くして動けないほどだった。まさに「歓喜の歌」そのものだった。
デジタルになってからNHK教育の音楽番組が楽しみになった。午後7時からの「トップランナー」は23歳の天才ピアニスト小菅優の特集だった。リストの超絶技巧曲を演奏し終わった時彼女は「リストは超絶技巧曲20曲を10歳から50歳まで作曲した。その時その時のリストになりきるつもりで演奏している」と言っていた。9歳でドイツへ留学したとき初めて演奏したモーツアルトピアノソナタ20番やベートーベンのソナタ、メロディーラインが一番甘美だと私が思うショパン夜想曲20番嬰ハ単調「遺作」も演奏された。モーツアルトの生誕地ザルツブルクに住む彼女は今年は日本全国で10回リサイタルを行うという。時間が許せば是非聴いてみたい。
日経新聞日曜版の文化欄の随筆は出口裕弘の「変身する東京」だ。その中で「デンキブランを舐め」というフレーズがあった。デンキブランを電子辞書で繰ってみたら「ブランデー風の雑酒の商標名。明治20年ごろ東京浅草の酒店主、神谷伝兵衛が作り始め、同36年開業した神谷バーで販売し、大正中期にかけて全盛。電気がまだ珍しかった当時の命名」となっていた。